営業のクロージングとは?成約率を上げるコツとテクニックを例付きで解説

クロージングは営業の成果に大きく影響するプロセスです。お客様の意思決定を後押しするには、押すべきなのか引くべきなのか、タイミングに迷う人もいるのではないでしょうか。

この記事では、商談の流れに沿って営業のクロージングについて解説します。具体的に活用できるテクニックや求められるスキルもまとめました。クロージングがうまくできず悩んでいる方はぜひ参考になさってください。

 
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営業のクロージングとは?

営業活動におけるクロージングとは、お客様が迷わず意思決定できるように支援するプロセスです。商談で得られた情報を整理し、目的や状況に合わせて、決めてもらえる環境をつくります。ここでは、営業のクロージングについて解説します。

クロージング=最終決断を後押しするプロセス

クロージングは、商談の終わりがけに顧客に意思を決めてもらえるように、背中を押すようなプロセスです。多くのお客様は「興味はあるが決めきれない状態」にとどまっています。

営業は思考を整理しつつ、必要な情報を提示します。契約締結を迷う原因を取り除きながら進めるのです。このプロセスは、押し付けになってしまっては意味がありません。あくまでお客様に寄り添いながら、自身で選べるように整えていくのがセールスマンの役割です。

顧客が判断しやすい状況をつくる

お客様が迷う背景には、情報の不足や比較すべき基準がわかりにくいことがあげられます。営業は、お客様が判断できるように商品の価値や強み、リスク、他社との違いを整理して提示します。

顧客の迷いを減らして、納得感を高めるために判断しやすい情報整理をおこなうことで、前向きに検討してもらうことが可能です。

商談全体のクロージングを意識する

クロージングは最後のひとことだけで決まるものではありません。商談前のヒアリングから始まり、価値提供や不安解決など、商談の各段階で少しずつ積み重ねることが成功率の向上が期待できます。

この積み上げによって、お客様は不安感が取り除かれ、最後のひとことで意思が固まり決断できます。商談全体をストーリーとして設計する意識をもつことが大切です。

クロージングを成功させるための事前準備

クロージングの成約率を高めるには、商談前の調査や整理がポイントです。事前準備の質が結果を左右するため、綿密に行うことが大切です。ここではクロージングを成功させるための事前準備について解説します。

顧客の判断基準の把握

クロージングを成功させるには、顧客が何を基準に商品やサービスを選ぼうとしているのかを理解することが重要です。価格や量、導入時期などお客様ごとに判断の軸は異なります。
これらを事前に把握しておくことで、より良いプランを提案ができるのです。

ただし、信頼関係が築けるまでは、本音が見えにくいケースもあります。どのように判断するのか、ヒアリングで本心を引き出す姿勢が商談成功の前提となることを伝えます。

商談のゴール設計

商談をどのように締めくくるのか、ゴールをあらかじめ決めておきましょう。ゴールをもとに商談全体の流れを設計していきます。初回は課題を整理して、次は商品の理解を深めてもらうなど、どの段階でどんな合意を獲得すべきかをあらかじめ設計することが大切です。

強く商品に興味をもっていて即決するお客様もいれば、興味をもち始めたばかりで購入を検討しているお客様では、同じ段階でも得られる合意が異なります。その日の商談で達成したいゴールを決めておくことで、限られた時間でも進みやすくなります。

判断材料の準備

お客様が安心して決められるように、根拠となる資料や情報を用意しておくことが大切です。根拠となるのはおもに、導入事例や数値のもととなるデータをダウンロードしておいて、比較表を作成するなど判断材料となるものを用意します。

とくにお客様が知りたい情報を中心にまとめておくと、商談中にすぐ提示できるため、説得力が高まります。整理された資料は信頼されやすくなるため、信頼関係の構築にも役立ちます。

営業クロージングの基本と実践テクニック

クロージングを効果的に進めるには、商談の流れを4つのフェーズに整理して考えるのがおすすめです。それぞれのフェーズで実際に使える実践的なアプローチについて解説します。

課題共有|課題や悩みに寄り添う

初回商談など最初のフェーズでは、顧客の課題や悩みに深く共感することが大切です。課題や悩みを汲み取った資料の提示により、「この営業は自分の状況を理解してくれている」と実感し、信頼が生まれる可能性があります。

この信頼は商談の基盤になるため、クロージングのうえで大切です。潜在的な課題や悩みを引き出すには、現在の困りごとの要因をていねいに深掘りすることで引き出せることもあります。

価値理解|価値を理解してもらう

課題を共有後、自社の商品やサービスが顧客にどのような価値を提供するのかを伝えます。ここは単なる商品やサービスの紹介や説明ではなく、お客様の困りごとに自社製品がいかに役立つのかを理解してもらうフェーズです。

自社商品やサービスを利用することで、将来的に得られるメリットをデータにまとめて見せても良いでしょう。数字や写真などを用いて具体的にイメージできるような資料を作成するのがポイントです。

不安解消|不安要素を取り除く

クロージングを成功させるには、顧客が抱える不安や懸念を取り除くことが大切です。導入時の初期費用やランニングコスト、タイミングなど不安の種類は異なります。

これらを想定して事前に洗い出し、解決できる資料を作成しておきます。商談時に資料を見たお客様はすぐに不安が解消でき、前向きな判断ができるようになるでしょう。

決断支援|決断をサポートする

商談の最終段階では、顧客が迷わず決断できるよう、背中を押すフェーズです。これまでの商談で積み重ねてきたものを改めて提示します。

複数の選択肢を提示したり、判断材料を整理したりすることで決定しやすくなるのです。「さぁ選んでください」と強引に迫るのではなく、決断をサポートすることが大切です。

【シーン別】顧客が迷いを見せたときのクロージングのポイント

顧客が迷う理由はそれぞれ異なるため、状況にあわせたアプローチが必要です。迷いを見せたときにどうするのか、想定されるシーン別にクロージングのポイントについて解説します。

1. 価格で迷っている

価格で迷っている顧客には、事前に相場感を聞いて予算イメージをつかんでおくと提案しやすくなります。「他社さんでは〇万円ですが〜」と温度感を確かめるテストクロージングを取り入れて確認してみましょう。

価格の値引きが難しいときは上司に相談をして、サポート費用を減額する方法も考えてみましょう。また「支払う価値」を整理して提案するのが効果的です。「月額費用がかかりますが、導入により業務を30%削減できます」と提示します。具体的に得られる効果を数字で示すことで、価格を具体的に伝えられるため納得感を得やすくなります。

2. 他社製品と迷っている

他社と迷っているときは、判断軸をお客様と一緒に整理するのがコツです。価格や仕様、サポート体制、操作性などでどの要素を優先したいのかを決めます。「長期的に見据えたらサポートの必要性が高まります」などアピールするのも効果的です。

具体的に他社との比較を視覚的に見せるのもおすすめです。このときに決して他社を批判するような言いまわしは避けましょう。他社を批判する姿勢はあまり良い印象をもたれません。数字を用いて自社だからこそ実現できたことをアピールするのがコツです。

3. 自身で決定できない

決裁者不在や権限不足など、承認プロセスがとおりにくいケースでは、顧客の負担を減らす工夫をします。たとえば社内プレゼンにそのまま使える資料を作成することです。「この2ページのみ要約して伝えるだけでも大丈夫です」とポイントも伝えておくと信頼につながります。

商談相手の向こう側にいる決裁者に向けてアピールすることを意識することで「じゃ前向きに検討します」と社内稟議にかけてくれる可能性が高まります。

4. タイミングで迷っている

導入時期に不安がある顧客には、導入するタイミングによってどのように未来が変わるのか具体的にイメージしてもらいましょう。導入までのロードマップを提示するのがおすすめです。「導入いただければ半年後には3時間の業務短縮の効果がみられます」など時間軸で具体的な数字を入れて伝えるのがコツです。

しかし、企業や業界によってはどうしても「今は無理」という時期があります。このようなケースでは、導入しやすい時期を事前に把握しておくことが大切です。

5. オンラインで気持ちが伝わりにくい

オンライン商談では対面と比べて、気持ちが伝わりにくく、お互いに認識がずれてしまうことがあります。お互いの表情が見えているときは大きく頷くなど、気持ちを伝えることを意識するのがコツです。

商談中に温度感がわかりにくいときは、途中で相手の意思確認を行いましょう。現時点での提案が相手に伝わっているのかを知ることができます。スライドを豊富に使用して視覚面でフォローすることにより、理解度が深まり、オンラインでも商品の魅力をしっかりと伝えることができます。

成約率を上げるクロージングのコツ

クロージングを成功させるには、商談全体の質を高めることが大切です。成約率を上げるために実践できる基本的なクロージングのコツを紹介します。

迷いそうなポイントを事前に洗い出す

顧客が迷いそうなポイントを事前に把握しておくことで、スムーズに商談を導くことができます。価格や導入後の不安、社内稟議のとおりやすさなど想定される懸念点を先回りして対策を考えておくのです。資料にまとめておくと、商談の流れをたもちやすくなります。

1回の商談で本音を引き出せないときは、ヒアリングをくり返しながら意思を確認していくことがコツです。クロージング時に迷いや疑問が残っていない状況をつくるために、徹底的に整理しておきましょう。

顧客の本音を引き出す

どれだけていねいに説明しても、顧客の本当の不安をつかめていないと決断にはつながりません。短い質問を重ねて深掘りをしていきましょう。たとえば「現在迷っている理由は?」「やはり価格が気になりますか」といった余白のある質問は、顧客の本音を引き出しやすいです。

また、雑談などで距離を少しだけ詰めて、悩みや不安を聞く方法もあります。ただしこのやり方は心理的な抵抗を感じる人もいるため、顧客の反応を見ながら実践しましょう。

商品の魅力をアピールする

商品の特徴だけではなく、その商品が顧客の課題を解決するのかを具体的に示すことが大切です。同じ課題をもつ成功事例があれば、提示することでイメージしやすくなります。

伝えるときも「こちらの企業様は導入後、年間〇〇万円の削減を実現できました」と数字を入れて商品の魅力をアピールするのがおすすめです。この場合、同じ業界・同程度の規模の企業事例を選ぶことで、具体的なイメージをもってもらえます。

安心できる材料を増やす

顧客が安心して判断できるように、導入後のサポート体制も伝えることが大切です。成功事例や導入企業のレビュー、サポートの内容を説明すると信頼につながります。

内製化に向けたフォロー体制もあればそれも伝えてください。研修などで社員のノウハウが高まることで外部依存も減らせます。コストや条件面が気になる顧客からは好印象をもってもらいやすくなるのでおすすめです。

小さなYESを重ねて心理的抵抗を減らす

高額商材でなくても決断に抵抗をもつ人も少なくありません。「このタイミングなら導入できそうですか」「この機能は御社の課題解決に役立ちそうですね」など、小さな合意を積み重ねることで、心理的な抵抗を減らしてスムーズなクロージングにつながります。

また、どのような合意を取るかを事前に決めて臨むことで、商談の進み具合を把握しやすくなります。各商談で伝えたい内容の整理もしやすくなり、良質な提案につなげることが可能です。

あえて沈黙をして思考を促す

こちらから提案をしたあとに、あえて沈黙の時間をつくるのも効果的です。この沈黙は「ゴールデンサイレンス」と呼ばれ、顧客が自身の考えを整理するのに役立ちます。

説明が多かったり、検討が必要だったりする場合、そのまま話を続けると押し売りのような状態になり、商談が破談になるおそれがあります。また、対面のままの沈黙はプレッシャーに感じる人もいるため、少し席を外して様子を見る工夫も効果的です。

法人営業でのクロージングのポイント

法人営業のクロージングは個人営業とくらべて、意思決定の構造が複雑です。そのため、複数の関係者を理解したうえで段階的に合意を積み重ねる必要があります。ここでは、法人営業でのクロージングのポイントについて解説します。

関係者の役割把握

法人営業は担当者が決裁者ではないケースもあります。まずは「BANT情報」を理解しておくことが大切です。

B:予算(Budget)
A:決裁者(Authority)
N:ニーズ(Needs)
T:タイミング(Timeframe)

それぞれの要素を業務として担う担当者がいます。決裁者でない相手にどんなにアプローチをしても具体的な商談には進みません。事前のヒアリングで把握しておくことで、クロージングに向けた戦略を立てることができます。

稟議で通す論拠の準備

法人営業では、稟議を通すためのエビデンスが整っているかどうかが成功を左右します。とくに決裁が通りやすくなる根拠作りとして、価格の妥当性や他社比較など決裁者が気にするポイントを押さえた資料を作成することが大切です。

KPIごとに合意を得る

法人営業の場合、扱う商材が高額だったり複雑だったりするため、商談が長期化するケースも多いです。クロージングまで立てられたKPIで小さな合意を得るなど、長期商談でも小さな前進を積み重ねる姿勢が大切です。

商談の進行に求められる営業スキル

商談をスムーズに進めるためには、顧客に深く共感し、本音を引き出したうえで納得しやすい形で提案するといったスキルが必要です。ここでは商談の進行で求められる営業スキルについて解説します。

傾聴と共感で信頼関係を構築する

顧客が自ら悩みや課題を話せる状況をつくるには、傾聴と共感の姿勢が求められます。相手の言葉を遮らずに受け止めることで心理的な安心感がうまれるのです。まずは、話しやすい空気をつくりましょう。ヒアリングの際に相槌を打つだけでも理解されていると感じやすくなります。

質問力を磨いて本質を引き出す

潜在的な課題を引き出すには質問力が重視されます。「資料作成に時間がかかる」という悩みを深掘りすると「使用ツールが使いにくい」といった潜在的な課題があるかもしれません。「なぜそれが問題ですか」「解決したらどうなりますか」といった質問を重ねて本質を引き出しましょう。

シンプルでわかりやすい説明を意識する

複雑な情報をそのまま伝えると理解がおろそかになり、購入の判断を妨げてしまいます。情報を整理して伝えるのはもちろんですが、専門用語など業界特有の言葉は誰にでも伝わる言葉で表現することが大切です。

▼以下の関連記事でも、営業の話し方のコツを複数紹介しています。ぜひあわせて参考にしてください。
https://www.9e-career.com/column/sales/article00020/

クロージングがうまい人に共通する要素

クロージングで成果を出す営業マンは、スキルや姿勢に共通点があります。ここではクロージング力の高い営業が実践している3つの要素について解説します。

顧客理解が深い

クロージングがうまい営業マンは、顧客の要望の裏側にある潜在ニーズまで読み取るスキルがあります。何を重視し、どのポイントで迷っていて、どのような未来を望んでいるのかを理解しているのです。深く顧客を理解することで精度の高い提案ができるようになります。

営業スキルが高い

そもそもの営業スキルが高い人は、相手に合わせて伝え方を柔軟に変えることができます。営業スキルとは、ヒアリングのなかで理解度を確認しつつ、説明の深さや順序を調整することです。次の商談に向けて不足している情報を集めるなど、商談全体の流れを踏まえたコントロール力に長けています。

改善サイクルを継続している

クロージングで成果を出す営業は、商談ごとに振り返りをおこなって改善のPDCAをまわしています。とくに失注したときは、何が理由でそうなったのか、質問方法や資料を見直すのです。すべての経験を学びに変える姿勢をもつことで、自身の営業スキルを磨いていけることを知っています。

▼以下の営業で使える「切り返しトーク」を厳選してご紹介しています。
営業で使える切り返しトーク集7選!断り文句別で営業話法をベースに解説

営業職でクロージング力を伸ばすためのキャリアパス

営業におけるクロージング力は、商談経験の数だけではなく働く環境でも成長レベルが変わってきます。ここでは、営業としてより成長するためにどんな環境や選択肢があるか、キャリアパスについて解説します。

育成体制がある組織で働く

営業職として成長できる環境とは、フィードバックやロープレ(ロールプレイング)が体系化された環境を指します。

こうした体制が整っている組織は、指導者から具体的なアドバイスや振り返りの習慣があるため、自身の弱みに早期に気づくことができるのです。勝ちパターンを共有できる文化があると、より早く成長につなげることができるでしょう。

難易度が高い商材・商品を扱う

複雑な商材を扱う経験は、営業スキルを大きく伸ばすきっかけとなります。複雑な商材とはたとえば、SaaS系ソフトウェアや金融商品などです。これらはシステムの理解や業界特有の言葉を理解する必要があります。

高額商材も多く、意思決定プロセスも複雑になりがちです。多方面なスキルが自然に鍛えられるため、営業職としてスキルアップにつながるでしょう。

思い切って転職をする

現在の環境で成長が難しいと感じているなら、思い切って転職を選ぶのもおすすめです。教育体制が整っている企業や、難易度が高い商材を扱う企業へ転職することで、新しいスキルを磨くことができます。

営業のクロージングスキルを発揮できる環境選びをサポートいたします

クロージング力は、顧客理解や営業手法などテクニックを学ぶだけではなく、実践し続けられる環境で大きく伸ばすことができます。現在の職場で思うように成果が出せていないのなら、成長できる環境で挑戦できる商材を扱う場所へ移ることも考えてみましょう。

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この記事の監修者

荒川 翔貴

学生時代に100名規模の営業団体を設立後、大手メーカーで新人賞、売上4,000%増を達成。その後人材業界に転身し、ベンチャー企業にて求職者・企業双方を支援。プレイヤーとして社内売上ギネスを塗り替えながら、3年で事業部長に昇進し組織マネジメントも経験する。

 

現在は株式会社9Eのキャリアアドバイザーチームリーダーとして、入社半年で再び社内ギネスを更新するなど、常に成果を追求し続けている。▶︎詳しく見る

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